36歳、Web系職種。勤続5年。
31歳で転職したとき、いくつかの会社を比較した。
給与だけなら、もう少し条件のいい会社もあった。 それでも今の会社を選んだ理由の一つが、フルリモートで働けることだった。
入社してから約5年。 自宅で働くことを前提に生活のリズムができ、フルリモートでも仕事は問題なく続けてきた。
仕事内容に大きな不満はない。 給与にも強い不満はなく、人間関係が悪いわけでもない。
ところが会社から、 「来月から原則出社へ変更する」という方針が発表された。
理由は、社内コミュニケーションの活性化や部署間連携の改善、 若手社員のフォローなど。
本人にも、対面の方が相談しやすく、 話が早い場面があることは分かる。
ただ、自宅から会社までは片道1時間強。 原則出社になれば、毎日往復2時間以上が必要になる。
そして何より引っかかっているのは、 フルリモートがこの会社を選んだ条件の一つだったこと。
もし5年前から「原則出社」だと分かっていたら、 同じ会社を選んでいただろうか。
入社時に選んだ条件が後から変わったとき、 今の条件でも同じ会社を選び続けるのかを考えるケースです。
このケースで見るポイント
会社を選んだ条件が、
入社後に変わった
給与が同じでも、
仕事に使う時間は増える
フルリモートへ転職すれば、
解決するとは限らない
このケースの3つの選択肢
今回の状況から考えられる選択肢は、大きく3つあります。
フルリモートは「便利な制度」だったのか
フルリモート勤務を、 会社が用意している制度の一つと考えることもできます。
制度である以上、 会社の状況によって変更される可能性はあります。
一方で、このケースでは少し事情が違います。
5年前の転職時、 本人はいくつかの会社を比較していました。
給与だけを見れば、 他にも選択肢はありました。
その中で今の会社を選んだ理由の一つが、 フルリモートで働けることでした。
つまり本人にとっては、 単に「あったらうれしい制度」ではなく、 給与や仕事内容、休日などと一緒に比較した会社選びの条件です。
だからこそ、 原則出社への変更を「制度が一つ変わっただけ」とは感じにくい。
大事なのは、 フルリモートを続けられるかどうかだけではありません。
現在提示されている条件でも、 この会社を選び続けたいと思えるか。
そこを改めて考える必要があります。
給料は変わらない。でも、仕事に使う時間は変わる
今回の変更で、 給与が下がるわけではありません。
仕事内容が大きく変わるわけでもありません。
それでも、 働くために必要な時間は変わります。
自宅から会社までは片道1時間強。 往復すれば2時間以上です。
週5日出社するなら、 1週間で10時間以上を通勤に使うことになります。
4週間なら40時間以上。
残業が増えていなくても、 仕事のために使う時間は大きく増えます。
もちろん、通勤時間と勤務時間は同じではありません。 そのため、通勤時間をそのまま残業や減給として考えることはできません。
ただ、 これまで自由に使えていた時間が減ることは、 働き方を考えるうえで無視できない変化です。
給与だけを見ると条件は変わっていなくても、 時間まで含めると同じ条件とは言い切れません。
会社が原則出社へ戻したい理由もある
一方で、 原則出社への変更を会社側の都合だけで考えるのも少し違います。
会社では、部署をまたぐ相談が以前より少なくなっている。
新しく入った社員から、 誰に相談すればいいのか分かりにくいという声が出ている。
オンライン会議を設定するほどではない小さな相談が、 後回しになることもある。
そうした問題を改善するために、 対面で働く時間を増やしたいという考えにも理由はあります。
本人自身も、 直接話した方が早い仕事があることは感じています。
だから今回の問題は、 「リモートが正しいか、出社が正しいか」ではありません。
会社にとって必要な働き方と、 本人が会社を選んだときに重視した働き方が、 5年を経てずれてきたことにあります。
フルリモートの会社へ移れば解決する?
原則出社が合わないなら、 フルリモートの会社へ転職する。
一見すると分かりやすい解決方法です。
ただし、 働き方だけを元に戻せばすべて解決するとは限りません。
フルリモートの会社へ移った結果、 給与が下がる可能性もあります。
仕事内容が変わるかもしれません。
今の会社で5年間かけて築いてきた人間関係や立場も、 新しい会社では一からになります。
フルリモートだからこそ、 社内の人と関係を作りにくいと感じることも考えられます。
つまり、 「フルリモートを取り戻すこと」と 「今より自分に合う会社へ移ること」は同じではありません。
外を見るなら、 勤務形態だけではなく、 給与、仕事内容、評価、働く時間なども一緒に比較する必要があります。
① 原則出社を受け入れて、しばらく働いてみる場合
一つ目は、 会社の方針を受け入れて実際に出社してみる方法です。
これは、 不満を我慢して働き続けるという意味ではありません。
5年間フルリモートで働いてきたからこそ、 出社中心の働き方が自分にどう影響するのかは、 実際に経験してみないと分からない部分もあります。
対面で相談できることで、 仕事が進めやすくなるかもしれません。
他部署との接点が増えたり、 今までより情報が入りやすくなったりする可能性もあります。
一方で、 通勤による負担が想像以上に大きいと分かるかもしれません。
まず一定期間試してみて、 メリットと負担の両方を確認してから判断する方法があります。
この選択が合いそうなのは
- 仕事内容や給与、人間関係には大きな不満がない
- 今の会社に5年間働いてきた理由がリモート以外にもある
- 出社による仕事上のメリットもありそうだと感じている
- 実際の負担を確認してから判断したい
原則出社を受け入れることは、 この先ずっと出社すると決めることではありません。
一度経験してから、 今の条件でも残りたいかを考える方法もあります。
② 会社と働き方を交渉する場合
二つ目は、 フルリモートと週5出社の間に別の働き方がないか確認する方法です。
会社としては「原則出社」でも、 実際の運用には余地があるかもしれません。
たとえば、
- 週2〜3日は出社する
- 部署ごとに出社日を決める
- 対面が必要な業務の日だけ出社する
- 個別事情に応じてリモート勤務を認める
といった中間的な働き方が考えられます。
もちろん、 会社が原則出社を決めた以上、 希望がそのまま通るとは限りません。
それでも、 「フルリモートがなくなったから残るか辞めるか」 の二択にする前に、 どこまで調整できるのか確認する価値はあります。
この選択が合いそうなのは
- 今の会社には残りたい理由がある
- 週5出社でなければ続けられそう
- 会社の出社目的そのものには一定の理解がある
- 働き方について相談できる上司や部署がある
交渉の目的は、 必ずフルリモートへ戻してもらうことではありません。
会社側の目的と自分の希望の間に、 続けられる働き方がないかを探すことです。
③ フルリモート・ハイブリッドの会社を外で探す場合
三つ目は、 今の会社で働きながら外の条件を確認する方法です。
ここでの「外を見る」は、 すぐに退職することではありません。
現在の転職市場に、 今と近い仕事内容や給与を維持しながら、 フルリモートやハイブリッド勤務ができる会社があるのかを調べます。
求人を見てみると、 希望に近い会社が見つかるかもしれません。
逆に、 フルリモートを条件にすると、 給与や仕事内容など別の条件を下げる必要があると分かる可能性もあります。
それも一つの判断材料です。
5年前に転職したときと、 今の転職市場が同じとは限りません。
今の会社を辞める前に、 現在の選択肢を確認しておけば、 「リモートだから転職する」ではなく、 複数の条件を比べて判断できます。
この選択が合いそうなのは
- フルリモートやハイブリッド勤務を今後も重視したい
- 週5出社による生活への影響が大きい
- 現在の市場にどんな働き方があるのか確認したい
- 今の給与や仕事内容もできるだけ維持したい
外を見るときは、 「リモート勤務できるか」だけで決めないことも大切です。
給与、仕事内容、評価、働く時間まで含めて、 今の会社と比較します。
3つの選択肢を並べてみる
| 選択肢 | 得られるもの | 気をつけたいこと |
|---|---|---|
| 原則出社を受け入れてみる | 出社による仕事の変化や、実際の負担を確認できる | 通勤によって生活に使える時間が大きく減る可能性がある |
| 会社と働き方を交渉する | 今の会社に残りながら、中間的な働き方を探せる | 希望する勤務形態が認められるとは限らない |
| リモート勤務できる会社を外で探す | 現在の市場で選べる働き方や条件を比較できる | リモートを優先すると、給与や仕事内容など別の条件が変わる可能性がある |
今の条件でも、この会社を選ぶ?
このケースでは、 一度視点を5年前から現在へ戻してみます。
もし今日、 今の会社から内定をもらったとします。
年収520万円。 今と同じ仕事内容。 今と同じ会社。
ただし勤務条件は、 「原則出社」です。
その条件でも、 この会社を選ぶでしょうか。
答えが「選ばない」だったとしても、 それだけですぐ転職する必要はありません。
次に考えたいのは、 何が変われば今の会社を選べるのかです。
週2〜3日の出社なら選ぶのか。 通勤時間がもっと短ければ選ぶのか。 給与が上がれば選ぶのか。
それとも、 働く場所を自分で選べること自体が譲れないのか。
そこを整理すると、 フルリモートの有無だけではなく、 自分が仕事選びで何を重視しているのかが見えてきます。
このケースなら、まず何から確認する?
このケースでは、 原則出社の発表だけで残るか転職するかを決める必要はありません。
まずは、実際の勤務条件を確認します。
- 原則出社は本当に週5日なのか、例外やリモート勤務の余地はあるのか
- 通勤時間や生活リズムなど、自分への影響はどの程度あるのか
- ハイブリッド勤務など中間的な働き方を相談できないか
- 今と近い給与・仕事内容で、希望する働き方ができる会社は外にあるのか
そこまで確認してから、 今の条件でもこの会社を選び続けたいかを考えます。
会社が働き方を変えたからといって、 こちらもすぐ会社を変える必要はありません。
一方で、 入社時に重視した条件が変わったのに、 「もう5年働いた会社だから」という理由だけで残る必要もありません。
5年前に比較して会社を選んだように、 条件が変わった今、もう一度比較してみる。
その結果として、 今の会社を選び直すことも、 別の働き方を選ぶこともできます。
CASE 006
入社時に選んだ条件が変わったなら、もう一度選び直していい。
フルリモートから原則出社へ変わったからといって、 すぐに転職する必要はありません。
実際に出社してみたら、 今までより仕事が進めやすくなる可能性もあります。
会社と相談することで、 フルリモートと週5出社の間に続けられる働き方が見つかるかもしれません。
一方で、 フルリモートが会社を選んだ重要な条件だったなら、 「制度が変わっただけ」と片付ける必要もありません。
5年間で築いた仕事と生活のバランスも、 働く場所を考えるうえで一つの条件です。
今の会社で積み上げた5年間にも価値がある。
今の働き方で作ってきた生活にも価値がある。
だから、 どちらかをすぐに捨てる必要はありません。
実際の出社条件を確認する。 中間的な働き方を探る。 外にどんな選択肢があるのかを見る。
その材料を並べたうえで、 一度問い直してみます。
今提示されている条件でも、 この会社をもう一度選びたいか。
条件が変わったなら、 選択肢を比較し直すところから始めても遅くありません。

